6月の半ば頃の話。
当時俺はバイクを買ったばかりで、大学が終るとしょっちゅう一人でバイクに乗ってあちこちを走り回っていた。
その日も特にする事がなかったので、次の日休みという事もあり、神奈川方面へ結構な遠出をした。
で、その帰り道、たしか0時過ぎくらいだったと思う。
標識を頼りにあまり車通りの多くない道を世田谷方面に向かって進んでいると、急に前を走っていた車が急ブレーキを踏んで蛇行しガードレールにぶつかった。
目の前で事故を見たのは初めてだったのでかなりビビったが、そうも言ってられないので、ひとまずバイクを路肩に停めて車のほうへ駆け寄った。
車の窓から中を覗き込むと中には女の人がいて、両手でハンドルを持ったまま頭を項垂れてガタガタ震えている。
「え?これヤバくね?」と思い、とりあえず窓越しに「大丈夫ですかー?」と声をかけたのだが、女の人から返事は無い。
パニック気味だった俺は、ここで警察に電話しないととふと気付いて110番をした。
警察を待っている間、俺が何度か「大丈夫ですかー?」と聞いていると、女の人はやっと車から降りてきた。
見た感じ怪我は無さそうだが、顔色は真っ青で何かぶつぶつと呟いている。
少し呟きが気になったので、「どうしたんですか?」と口元に耳を近付けると、震えた声でとんでもない事を呟いていた。