1993年夏…
僕と妻、そして来年3歳になる娘が一人
私たち家族は中古一戸建てを購入し、都心から少し離れた、とある街に引っ越しをしました。
新居は、築年数がほとんど経っていないにも関わらず格安で、友人には「事故物件なんじゃないの?」などと言われたりもしましたが、特に気になるようなことはありません。
ご近所さんもとてもかんじのいい方で、たまにおすそ分けなんて言って、手料理やお菓子などをいただいたりすることもあります。
新しい環境にも慣れ、しばらくは穏やかな日々が続きました。
しかし、1ヶ月を過ぎた頃から妻の体調が悪くなり、「視線を感じる…」と怯え始めるようになりました。
やはりいわく付きの物件だったのだろうか…?
ある日お隣のおばさんに、ここの土地は家が建つ前はなんだったのですかと尋ねてみると、
「あぁ、ここはうちの畑だったのよ。うちの主人がいなくなってからは手入れもできないし、手放しちゃったんだけどね…」
おばさんは少し寂しそうにそう言いました。
そういえば、お隣はおばさん以外の家族が出入りしているところを見たことがない。
寂しいから色々とうちに世話を焼いてくれているのかもしれない、そう思った。
ある日曜日、相変わらず体調の悪い妻に代わって、娘と遊んでやろうかと庭にでることにしました。
庭には、以前の住人も子持ちだったのか、小さな砂場があります。
そこで砂遊びをさせていると、娘が何か見つけたようなので近づいてみました。
何かが埋まっている様子だったので掘り起こしてみると、砂の中から真新しいクマのぬいぐるみが出てきました。
以前の住人の子供が埋めたものだろうかと手に取ろうとしましたが、妙な違和感を感じ、慌てて手を離しました。
よく見ると胴体の部分が真っ赤な糸で縫い直されていました。