少し前の話です。
私の家は、もともと山を切り崩した土地の住宅街で一戸建ての家々が建ち並ぶ中にありますが、すこし団地を外れると途端に人気のない田んぼや、砂利道が現れるような場所にあります。
いつものように仕事を終え、電車を乗り継ぎ、最後の電車である田舎道をゆく○○電鉄に乗りました。
休日出勤で、終電間際の時間帯ということもあり人はほとんどおらず、電車の心地よい揺れに、ついうとうとしてはっと気がつくと降りるはず駅を通り越して終点の一つ手前の駅に着いてしまっており、仕方なくいったんその駅で降りました。
私以外に二人、スーツ姿の女性が一緒に降りて改札に向かいました。
真夜中で人気のない無人駅なので、ほかに降りる人を見てなぜかほっとしました。
ひとりの女性は駅のロータリーにすでに迎えの車が来ていた様子で、もう一人の女性は歩きながら携帯で何やら話し込んでいました。
すぐに前の駅に引き返そうかとも考えたのですが、この駅からでも団地と団地の間にある山道を抜ければ、少し距離はありますが家には辿り着けるのでその抜け道に向かいました。
その抜け道は以前にも何度か使っており、一応フェンスがあるのですが人が通れるほどに切り裂かれ、電灯がない空地に囲まれた坂道をほんの2分ほど歩けばすぐに目の前に民家が現れます。
夜は暗くて少し怖いですが、歩きなれた道なので気にせずに向かいました。
団地を抜けてフェンスが目に入ったとき、いつもと違う感じがありました。
近づいてみると、以前穴のあったフェンス部分に、工事現場に置かれるような黄色い「立ち入り禁止」の柵が貼り付けられていたのです。
高さは私の背ぐらいで、その気になればよじ登れる気がしたのでしばらくどうしようか立ち止まって考えていました。
その時、柵の向こうで何かカラカラというような金属音が聞こえたのです。
風に柵が揺れたのかな?とおもい目を凝らすと、何とも言えない、妙な悪寒が背中に走りました。